岩手極寒燻製とは

 

【極寒燻製って?】

燻製には大きく分けて「熱燻」「温燻」「冷燻」の3種類があります。 文字通り材料を燻す温度によって分かれており、熱燻は80℃~140℃(10分~1時間)ほど、温燻は30~80℃(数時間~1日)ほど、冷燻は30℃以下(1日以上)で行うものと言われています。

一般に広く知られている燻製法は、熱燻と温燻です。材料に調味液(くん液)で味や香りを付け、燻製器を用いて高温・短時間で燻すことで、食材を香ばしく仕上げていきます。

一方、冷燻は低温・長時間で燻すことが特徴です。そのため、熱燻や温燻と比べると温度管理や製造期間等の面で手間がかかります。しかし、食材に熱を加えないため、素材本来の味を最大限活かすことができ、また、時間をかけてじっくり水分を抜いていくため、食材の持つ旨味をぎゅっと凝縮した保存性の高い燻製をつくることが可能です。


私たちの極寒燻製は、通常の冷燻づくりの温度をさらに大きく下回る過酷な条件下でつくられています。燻しを行う場所は、岩手県宮古市の中心部から70㎞ほど離れた区界高原(くざかいこうげん)。標高約700m、厳冬期には気温-20℃を下回ることもある、岩手県でも指折りの寒冷地です。この極寒の自然環境を活かしながら、ナラ、ケヤキ、クリなどの広葉樹の燻煙で食材を燻していきます。製品の種類や気象条件によって期間が異なりますが、中には2ヶ月以上燻し続けるものもあります。

凍える寒さの中でゆっくりじっくり仕上げることで、ケミカルなものを一切添加せずとも、素材そのものの奥深さが引き出され、かつ保存性にも優れた燻製ができあがります。

【伝統を引き継ぐ】

燻製の歴史は古く、約13,000年前の石器時代にはその原型があったと言われています。人類が火を使うようになって間もなく、焚火の煙に当たった食材には害虫や菌が付きにくく、長期保存しやすくなることに気付いた祖先がいたようです。その後、この情報が広まっていくにつれ、世界各地で地域性に富んだおいしい燻製が登場してきました。

岩手極寒燻製は、岩手県宮古市で活動していた水産加工団体『南部鮭加工研究会』の事業承継から始まりました。研究会が長年の活動の末につくり上げた冷燻法は、三陸の伝統的な特産品である新巻鮭の製法をベースに、鮭が遡上する川の源流付近まで原材料を運び、冬の高原の厳しい気候の中で乾燥・燻製を行うという、まさに人類の知恵と地域の風土を上手に掛け合わせることで生まれた技術です。

郷土で育まれた食文化や特産物がなくなっていくのは、とてももったいないことです。岩手の山海の恵みが詰まった味、この地だからこそ生まれた冷燻技術を、これからも大切に後世へ繋げていきます。